こんにちは、田中です。
「この間、うち、相続税かからなかったんですよ」
こう話すご家族は多いのですが──実は、“ずっと税金がかからない”とはかぎらない、ってご存じでしょうか。
相続が発生する家族のうち、相続税申告が必要になるケース(=相続税を納税しなければならないケース)の割合は、全国平均でおおよそ8〜10%前後と言われています。つまり、約9割は相続税がかからないということになります。
「相続税=富裕層だけ」ではなくなっている!?
地価の高い都市部では、中流家庭でも課税対象になるケースが増えています。自宅1つしかないのに相続税が発生するという事例も多くなっており、特に現金が少ない相続では深刻な負担になることも。こうした事態を防ぐには、小規模宅地等の特例を活用できるかがカギになると言えそうです。
相続税は1回はかかるのが原則
相続税とは、財産を相続や遺贈によって取得した人が支払う税金のことです。現金や預金だけでなく、不動産・株式・生命保険・貴金属など、さまざまな財産が課税対象となります。
相続が発生するときに計算するのは、ざっくり以下のようなものになります。
ここでよくある誤解が、配偶者に全部相続させたら、税金がかからなかった=相続税は無関係と思ってしまうことです。
配偶者の税額軽減(通称:配偶者控除)は、課税の繰り延べです
たしかに、配偶者控除(最大1億6,000万円)という制度を最大限利用して配偶者が相続すると、税金がかからずに財産を受け取ることができます。ただし、これは単に相続税が猶予されているだけであって回避ではありません。つまり、次の相続(配偶者が亡くなったとき)にて、子どもたちにはしっかり課税される可能性が高くなります。
自宅に相続税!? 奥様の生活を守る「小規模宅地等の特例」とは
相続税でよくある心配ごとのひとつに、次のようなケースがあります。
「夫が亡くなったあと、妻はそのまま自宅に住み続けたい。でも、相続税がかかるならこの家を売らないといけないのかしら!?」
土地や建物の評価額が高いと多額の相続税が発生することがあります。そんなときに使えるのが、小規模宅地等の特例という制度です。
小規模宅地等の特例:最大80%オフになる“土地の割引制度”
小規模宅地等の特例とは、被相続人が住んでいた土地(または事業・貸付で使っていた土地)について、一定の要件を満たす相続人が取得すれば、土地の評価額を大きく減額できる制度です。
特定居住用宅地(自宅):減額できる割合は最大で80%
計算例:実際どれくらい税金が減るの?
評価額が5,000万円の土地(自宅)を、奥様が相続するケース
→ 差額は640万円!これだけで、自宅を守れる可能性がぐっと広がります。
注意!自動では適用されません
この特例は、申告してはじめて適用される制度です。
「うちは相続税がかからないと思っていた」
「自宅だけだから大丈夫だと思っていた」
申告しなければ恩恵を受けられなくなってしまうので注意が必要です。
同じ財産にまた税金!?「相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)」の存在
相続人が相続を受けた直後に亡くなって、短期間で同じ財産に課税が重なることがあります。一定期間内に連続して相続が起きた場合は、税の二重負担を軽減する制度として相次相続控除が設けられています。
例えば、こういうケースです。
このとき、孫が相続するのはたしかに長男自身の財産ですが、よく見てみると中身の多くは、元は父の財産だったりします。つまり、同じ財産に、短期間で2回相続税がかかってしまうことになります。
1回目で相続税を払った人が10年以内に亡くなったときに限り、その人が払った税金の一部を2回目の相続税から差し引けます。相続税を支払った人が亡くなったときの話なので、たとえば、配偶者が最初の相続で相続税ゼロだった場合、相次相続控除は使えません。
相続の手続き中に次の相続が起きる!?数次相続(すうじそうぞく)の現実
実務では、まだ前回の相続の名義変更が終わっていないのに、相続人の1人が亡くなったという事態も少なくありません。
たとえば、父が亡くなり、まだ相続手続きが済んでいないうちに、母が亡くなってしまったら!?
このように、相続の「途中」で相続人が亡くなり、新たな相続が発生することを数次相続といいます。
よくある数次相続の例:
話し合いに関わる人数がどんどん増えることがあり、実務では大混乱することも。
まとめ: 相続は“税金”より“段取り”が大事です
相続税は、1回目はゼロでも、2回目にどっと増えるケースも。
また、手続きを放置していると、思わぬタイミングで数次相続が発生し、相続人が増えてしまうこともあります。うちは揉めないから大丈夫ではなく、今のうちから、税金・名義・話し合いの“段取り”を組んでおくことが何より大切です。
相続は、1回終われば安心・・・ではありません。
むしろ、いつかはまた誰かが亡くなって、次の相続がやってくるのが現実です。
これが、いちばんの相続対策になります。
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